「ドッシリした母親」
「5年生になる男の子が、学校でイヤなことがあると、家に帰ってから壁を蹴る、弟や妹にあたる……私は母親としてドッシリかまえたいと思って、つとめて知らん顔をしてるけれど、夫の両親も同居していて、この子の乱暴は、嫁である私のしつけが悪いからだと言います。叱ってあげた方がいいのか、かばってあげるべきか、やっぱりじっと見守る方がいいのか……」。
こんな相談を受けたことがあります。どこの家庭でも、思春期の入り口にさしかかった子どもがいれば、程度の差はあれ、同じようなことが起きていることでしょう。
この相談に対して私がどう答えたかは別として、この相談をする女性(母親)に対し、疑問があります。まず、子どもと共に生活する場である家庭に対し、生き物である子どもに対し、あまりにも実体のないもののように接しているという点です。
「母親としてドッシリかまえたい」とか、「つとめて知らん顔」、「叱ってあげる」とか「かばってあげる」、「じっと見守る」などの言い方は、みんなどこかの本や評論家・学者の口から出てくることばのように聞こえてしまいます。
この男が求めているのは、(父や)母のホンネの声ではないでしょうか。壁を蹴ったら「何するの、やめなさい」と言ってほしいでしょうし、弟や妹をいじめたら「やつあたりはダメ
! 」と言ってほしいのだと、私は思います。この少年が心から抗議しているのは、もちろん「学校でのイヤなこと」に対してのものもあるでしょうが、自分に対してオロオロと、まるでハレモノにさわるみたいに接する家族に対するものではないでしょうか。
姑の気持ちなど二の次、三の次。何よりも正直に、子どもの感情に対して応えてやってください。いけないことをしたら、おなかの底から「コラーッ」と叫ぶ、そういう母親をまわりが「ドッシリかまえた」と表現するのです。