こどもの「しつけ」?
去年の秋から、名古屋地方裁判所に時々行っています。去年夏、名古屋市で起きた、小学2年生の少女に対する虐待死事件の裁判を傍聴するためです。幼児虐待が社会問題になっているわりに、その背景が報道だけでは分かりにくいので、自分の目で耳で見たり聞いたりしたいと思い、とても大きく報道された事件をとり上げて、通っています。
少女は実の母親(32歳)と、母親が同居した男性(29歳)に、スタンガンを当てられたり、ヒンズースクワットといわれる立ったりしゃがんだりをくり返す〝運動〟を何百回もやらされたり、食べ物をもらえなかったりの暴力を受け、とうとう死んでしまいました。
これらの暴力を「なぜ?」少女に加えたのかと問うと、警察でも検事さんの前でも、「しつけだった」という答えが「父母」から返ってきたそうです。これは「しつけ」なのでしょうか? そもそも「しつけ」っていったい何なのでしょうか?
私はもう何年も前から「しつけ」ということばは使いません。「生きていくための技術を伝える行為」と、言い換えて使っています。いささか長ったらしいので、つい「しつけ」と言ったほうがラクなこともありますが、意識して使わないようにしています。
子どもに、食事のときはテーブルに向かって静かに食べようねとか、脱いだ服はきちんと片付けようねとか、電車の中ではできるだけ静かにしようねと言っていくことは大切です。なぜ大切かといえば、他の多くの人たちと共に生きるとき、その人たちに不快感を与えないようにしてやることは、その子が生きていく上で大切な技術だからです。
「しつけ」ということばには、圧力が感じられます。圧力で伝わるものは恐怖です。時間をかけて、あきらめず、技術を伝えてやってください。技術を伝えるのに、スタンガンは必要ないはずです。